九州遠征-マイマイカブリを追うドラマ-完結編

2017.09.10 (Sun)
関東に帰ってきてから、殺人的な忙しさで、あっという間に夢幻想から現実に戻された感じがあります。発送したい荷物も出荷が滞っており、もやもやとしながら流星のように日々が過ぎていきます。

それでも九州、マイマイカブリ採集遠征の感動が薄れることはありません。帰宅し、わずかな睡眠時間の前に水槽の前に立つと、ホペイを手に取ってからでもデカイ!と感じるマイマイカブリが堂々と居座っています。

1週目、手ごたえ無し。



2週目、手ごたえ無し、気力がなくなる。




もう、本当の本当に本心からあと1週にすることに決めました。最後の1週だからといって、確率が上がるわけが無いのです。ただ、同じ確率がもう1回あるだけの話なのです。それが、採集の辛いところなのです。

しかし、その最後でどんでん返しがある場合があるのです。これが、採集の謎、神秘的で中毒性の最も高いところなのです。










山の下から、最後という灯に照らされる数%の期待感を膨らませ見て回ります。しかし、そう簡単にマイマイカブリは現れてくれません。もともと絶対数が少ないのです。車に引かれている個体も見かけません。いくら林道を照らしても、マイマイカブリが歩いているのにひょっこり出くわすという経験もありません。本当に、採りに行かないと出会えない虫、という印象です。最初のポイントは実績もありましたが空振りでした。だろうな、と思ってしまいました。

他のポイントもことごとく空振りです。そうして、それなりの個体が採れたポイントにやってきました。いつもは車から飛び降りるのですが、重い足取りで車から出ます。さて、私は下の方から、同行者は上の方から照らしていくという行動パターンでした。そのポイントは、山の比較的高いところであり、杉の木にトラップをかけたところでした。杉の木はライトで照らすと明るいので、パッと照らし、生き物っけの無いことがすぐに見てとれます。あぁ、残念。次も残念。さて、3本目は・・・・
















というところで、同行者がそろ~~~っと現れました。




YYさ~~~~~ん、あれ、マイマイじゃないですかぁ???








この時ほど心臓が跳ね上がったことはありません。彼は、釣りも上手く、採集も上手。デカイ昆虫を見て、ヌシ的存在の生物を見てきた人です。その彼が、じゃないですか??とそろ~~~っと言葉を吐き出したのです。そのおとなしく繊細な声の裏には、重厚かつ亀裂が入りそうな緊張感が含まれているのです。ここまで苦労をし、ここまで体力をすり減らせ、ここまで精神力を削り、そして巡り合ったマイマイカブリ、普通はテンションが跳ね上がるところです。しかし、その上でこのような表現、これは、大物がかかったのか???

現場数m先へ直行します。いきなり照らして、ポタッと落ちては大変ですから、そろ~~~っと照らします。一体、どのようなマイマイカブリがくっついているのか、見ていない私には想像しかできません。照らすと、黒い塊のようなものがぼんやりと見えました。







あぁ、あれは、
ざんねんながら、バナナトラップの黒化した皮の部分だ。。








確かにマイマイカブリのように見える。
でも、あんなにデカくてデロンとしている訳が無い。
なによりも、幅が広すぎる。当地のマイマイはもっと細身だ。

やっぱり、夜明け方まで山を駆け巡ると目もおかしくなってしまうようだ。
おかしいというより、おかしいレベルの採集をしている自分たちに業がある。

「あ、あれは残念なが・・・・・・






ん?






マイマイカブリかそうでないか、それを夜に見分ける決定的な特徴、それは、マットブラックであるかどうかです。マットブラックなものって、意外と自然に無くて、マイマイカブリは、ワイルドものが木にくっついているときって、雨でも相当なつや消しブラックに見えるんです。なので、木や葉の影がマイマイカブリであると長時間錯覚することもあるほどです。なので、今度は体積があるかどうかを見ます。体積があり、マットブラックな巨大甲虫の陰であった場合、それはマイマイカブリ以外の何物でもないのです。

先ほどのバナナトラップに見えた影は、マットブラックであった。もう少しいうと、少し灰色がかっていた。泥をかぶったマイマイカブリの特徴ではないか!!??





もう一度そろっと照らしてみると、その黒いシルエットの位置が変わっている!!
うわぁ!!!マイマイカブリだ!
物凄いエリトラの広さだ!!!

も・の・す・ご・い、
エリトラの幅!!!!

これがとにかくこの時に感じた大きな感想です。
良くみると、ひえっ、っていうレベルでは無いか!
さて、ここからコンマレベルの思考回転が始まります。


・まず、その杉の木はすぐ後ろが絶壁になっている。
・木の下には、ふかふかの枯れ枝が積もっており、落ちたらアウト。
・その目的の木まで7~10m。
・その場所まで行くために、まず下草を踏み分けなければならない。
・次に、枝を踏みながら接近しなければならない。
・木の根元よりも前は、幸いモグラが盛り上げてくれた土がある。
・その土を踏むことができれば、手が届くところまで無音無振動で寄れる。
・そういうことを考えている間にマイマイカブリは移動をする。
・木の表面は広葉樹ではないため、普通の歩行でマイマイカブリが落下する可能性もある。
 




ライトの輪郭でマイマイカブリの場所だけを辛うじて特定しながら接近する。






俺は生き物ではない。
俺は風であり、木であり、土であり、石であり、
石を持たない天然の無生物である。

そういう存在にならなければ・・・・・。




接近していく。
下草をそっと踏んでいく。
マイマイカブリに大きな移動は見られない。
近づけば近づくほどとんでもない体積のマイマイカブリだ。



枝を踏む。
血よ、流れを止めてくれ。




モグラが盛り上げた土の上に降り立つ。
マイマイカブリの体積が確認できる。
凄い、モンスターだ。
でも、そう思っている自分には生命っ気があるだろう。
無心になろう。
無心になろうと思っているうちは無心になれていなくて、
そういうことを考えているうちはまだ無になり切れていない。



手が余裕で届くところまで行く。
どのように掴むかのシュミレートを無心の中で行う。
体積があるはず、だから、上から抑えつけるのは愚策。
脚力もあるはず、包み込むように、しかし確実に握るように、
かつ落とさないように・・・・・・脳の中で成功と失敗が無限にループされる。







「100%・・・・・採ります」






そう言ったらしい。
その記憶が無いので、本当に無心になっていたようです。








マイマイカブリが、ゆっくりと木の上の方に歩行を始める。
カサカサしていない、のったりとしている。
重そうだ。凄い首をしている。
そして、なんて長い脚なんだ・・・・・。




手を伸ばす。
あぁ・・・・・・できることなら・・・・・鼓動を止めてしまいたいよ。。。。






ガツ!!






まだ叫ばない。
確実に獲物の感触を手の平の中に感じる。
直ぐに、落としても大丈夫な平たい路面に走りでる。


まだ叫ばない。
直ぐにクリアカップに入れる。













よおおおおおおおおおおおおおっっっっっっっっっっっっっっっしゃぁあああああやったああぁぁぁぁ!!!!!!








凄いのを採った。
とんでもない量のメタクリル酸と、エタクリル酸を噴出し、
腹部をひくひくさせている、
カップを横にして全貌が見えるマイマイカブリを捕獲した。
しかも、ド・カンピンである。
物凄い巨体である。感無量である。涙が込み上げた。


IMG_7182.jpg
怪物を採ってしまった・・・・!!

IMG_7177.jpg
胸部の立体感が鋭利であり、
かつゴツイ。標高がマイマイカブリとしては高いため、
脚がとてつもなく長い。
しかも、これほど素晴らしい個体ながら、擦れ・欠けの無い、
非常に美しい個体。

IMG_7186.jpg
ムクロの発達が、珍しく、とても甘い個体で、
サイズは60.2mm、前回の個体よりも長さはおとなしい。
しかし、プラカップの中では、前回個体が届かなかった天井に手を伸ばし、
捕まるような脚の長さ、体格の良さを誇る。
どちらが自己ベストマイマイかと言われると、間違いなくこっち。

神様、有難う!!
この採集には根拠はありませんでした。
確信もありませんでした。
でも、奇跡はありました。
福江以外で、このレベルのマイマイを採ることができた。
しかも、山地性のマイマイカブリで!






最後に、約束通り、B品の大型マイマイをリリース。
ゆっくり歩いていく姿に哀愁を感じました。
初めて、採集者として欲望を無くした採集でした。
あと1日やろうと思えばできるけど、
これ以上は無くていい。



最初の個体に地面で飛びついた瞬間、
その時のコマ送りのような映像。
この個体を見たときのエリトラ面積の衝撃。
一生ものです。
プライスレスです。





あぁ、楽しかった。
とても疲れた、凄くすり減った。
でも・・・・・・もうまた旅に出たい!













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コメント
壮絶な戦い!楽しませて頂きました。こう言う事があるから採取は、辞められないですよね笑しかし巨大個体が2頭も採取できて良かったですね!今度は、採卵ですかね?マイマイとても価値のある昆虫だと改めて思い知らされました。貴重な採取情報ありがとうございました。とても楽しませて頂きました。
ロックモンスター | 2017.09.10 14:12 | 編集
デカいの獲れて良かったですね!
全く素人ですが、この個体の迫力は感じ取れます!

話は変わりますが、30年以上前と、最近のアブラゼミやアメリカザリガニが小さくなった気がするのですが、気のせいですかね?
あとノコギリクワガタも頭幅が広い奴見なくなった気がします。

あれですかね?大人になって卒業した小学校とか行くと、校舎が小さく感じたり校庭が狭く感じたりするやつと一緒ですかね?
BB | 2017.09.10 23:08 | 編集
ロックモンスターさん

いつもコメント有難う御座います。
こういう出会いのスリルと、出会ってから捕獲できるかという
緊張感がマイマイカブリ採集の魅せてくれるところです。
今期の採集は大成功です。
ブリードもしたいんですが、カタツムリのすとっくが
億劫ですね。。


BBさん

最近、ネットで採集場所が広まりやすいので、
穴場が穴場でなくなっていっているように思います。
アブラゼミはサイズが変わっていないと思いますが、
ノコギリクワガタの大型は減ったと感じます。
20年前は、うわぁっていうのがいましたよね~。
クワガタは、ガチンコ採集をやっている人以外の場所では
小さくなっていると思います。
ヒラタなんて、60mmはまず拝めないですね。
| 2017.09.20 10:55 | 編集
コメント遅くなりまして申し訳ありません!

このような執念のドラマが…あったのですね!

とても立派で、しかも綺麗な個体ですね。
離島ではなく60mm以上というのはとてもレアでしょう。

おめでとうございます!

ご一緒に遠征採集に行きたいですね。
カシオペア | 2017.10.09 12:41 | 編集
カシオペアさん

採集はドラマですね~~~!!
60mmを狙いに行っておきながらなんですが、
まさか60mmが現実になるとは思いませんでした。
採集遠征行きたいですね、
僕は福江にもう一度行きたいです。
福江でないと、採れないサイズの60mm後半を拝んでみたいです。
また、今年度はキタカブリだけは採集に行こうと思っています。
黒いマイマイカブリは来年までお預けでいいかなぁ、
という満足貯金が出来てしまいました。
YY | 2017.10.10 21:53 | 編集
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